体力のあった32歳の頃です。
ある編集部から電話がかかって来て、「樹本君、ゴルフ漫画かける?」
「ゴルフ・・・? ああっ年寄りがやってるスポーツですね。」
「原作つけるから、24 枚で・・・何とか頼むよ、ねっ!」
当時、私は野球好きで「野球漫画」をよく描いていた事もあって、
「分かりました、野球もゴルフもボールを打つスポーツですから大丈夫でしょ。」
と、軽い気持ちで引き受けたものの、ゴルフの経験など1度もなく、
クラブすら握った事もありませんでした。
「小遣い稼ぎで、ちょいちょいっと片づけよう!」と、気楽に考えていたのですが、
原作をもらっても専門用語が分からず、編集者に質問責め。
困った編集者は「原作者にゴルフを教えてもらえっ!」の、ひと言で終わらせる始末。
当時、TBSテレビにゴルフ練習場がありました。
そこで手取り足取りで2時間ほど教えてもらい、打ち合わせも完了。
(今だから言える話ですが・・実は原作者というのが “T B S 社員” でゴルフの上手な方でした。)
1週間後、仕上がったものは、野球スイングを下に向けただけの、
とんでもない《ゴルフ漫画》が・・・。
1ヶ月後、読者からの “クレームはがき” は当然・・・編集者も遠回しに文句を
ブチブチ・・・いやみをポツリ・・・。
リベンジを申し出たのは言う迄もありません。
「完璧なゴルフ漫画を描いてやるっ! !」
翌日から練習場通いが始まりました。
夜明けと同時に始まり、昼を過ぎるのは当たり前の日課になりました。
[1日6時間〜8時間 ] ボールを打ち続けました。
笑えるほど(ドツボ)にはまった典型図ですね!
その後何度描いても自分自身納得出来ず、もう一回・・・もう一回・・・と、
編集部に頭を下げていました。
はまれば、はまる程ゴルフが少しずつ理解できるようになり、楽しくなってきて、
1日前の練習にダメだしが出来る自分に上達しているのです。
当時、半年間でゴルフレッスン書を50 冊近く読んだ記憶があります。
読みながら試し、試しながら読み、練習に明け暮れる毎日でした。
(なじみの本屋さんに行っては、片っ端から買い、次を探しては注文して・・の繰り返しでしたね。)
練習場では顔なじみになった年配のおじさん達にからかわれましたね。
「お前さんみたいに本を持ってきて練習する奴を初めて見たよ」
「本を読むよりトラック一杯のボールを打った方が早いぞ!」と。
※当時は《トラック一杯のボールを打つことが上達の近道!》と、皆さん真剣に考え、
言っていました。 今では笑える話ですが・・・。
ゴルフ専門誌は、週間誌、隔週誌、月刊誌、全て買い、読み漁りました。
【その頃の1日は・・・】
○仕事----------------10 時間
○睡眠----------------4時間
○ゴルフに費やす時間----10時間
何て素晴らしい時間配分の1日なんでしょう!
体力があった30代とはいえ、よく1年間続いたなあ・・・と関心します。
(睡眠不足は仕事中に解消していましたね・・ははは・・)
その頃読み漁ったレッスン書が、私の仕事場の本棚に今も並んでいます。
「 ゴルフを始めたきっかけ 」完。